もう10年近く前、2009年ごろになりますが、当時よくジョギングする川辺にいた野良猫さんたちへ定期的に会いに行っていました。確か3匹いて、それぞれ性格が異なっていました。1匹は臆病で全くなつかずにすぐ隠れてしまい、もう1匹は活発で寄って来て匂いはかぐけど触ることはできず、最後の1匹は名前がたまちゃんと言っておっとりしていてとっても人懐こく、ジョギング途中によく撫でにいったものです。
その3匹は世話してくれている方々がいらっしゃって、散歩がてら朝夕にご飯をあげていたようです。夕方にちょうど自分が走る時間とかぶることがあり、話をさせていただくようになりました。
ある日、「お兄さん ( おじさんですけど笑 ) 猫好きなら最近捨てられたまだ小さい子猫がいるんだけど飼ってみない?」と言われました。「たまちゃん可愛がってくれてるのは知ってるから、もちろんたまちゃんを引き取ってくれてもいいんだけど」とも言われました。
たまちゃんは長毛ではないけどふわふわした毛並みでした。だけど野良猫で自分の毛づくろいでは追いつかないのか、胸のあたりの毛が絡まって太くなっていました。ちゃんとほどいてあげたいなと思う気持ちもあり、またなぜかたまちゃんは全く声を発することをしなかったので、もしかしたら舌を含む口内環境に問題があったのかもしれないなとも思っていました。
今まで猫飼ったことないし、2匹はいっぺんに無理だよなあと考えましたし ( あとでかなり後悔しました ) 、たまちゃんのことが気がきではないのでとても迷いました。
結局、野良猫さんたちを世話してる方々がまだ小さい子猫を勧めてくださるのは、たまちゃんは大丈夫、面倒見ますよってことだと解釈し、その幼くして一人、夜は真っ暗になるその川沿いで暮らすこととなり、とても不憫に思われた子猫さんを引き取ることにしました。
それがいまともに暮らすゆきちゃんとの、出会いのきっかけでした。
その、川沿いの野良猫さんたちを世話している方を心の中で「猫のお母さん」と呼んでいました。その「猫のお母さん」と相談して、まずはその子猫を見に行くこととなりました。後日、約束した日時にいつもの川沿いにジョギングがてら向かいました。待ち合わせ場所はたまちゃんたちの溜まり場の近くだったので、まずはたまちゃんたちに会いに行ってみました。
晩御飯待ちで、すでにたまちゃんたちは来てました。すると女性も一人いました。たまちゃん含む野良猫さんと仲よさそうだったので話しかけてみました。と、さらりと書きましたが少しためらいつつ猫好きさんに悪い方はいないだろうと思い声をかけたのです。すると近所のお店で働いてる方で、猫が好きなんだけど飼える環境じゃないから、こうやって癒されに来てるんですって話をしてくれました。
自分は自分で、猫を迎える予定であること、今からその猫さんを紹介してくれる「猫のお母さん」との待ち合わせがあることなどを話しました。その女性と二人してたまちゃんたちに存分に癒されたのち、時間も迫って来たので待ち合わせ場所に向かいました。お姉さんも一緒に来てくれました。
その途中にベンチがあって、よく見るとその下に小さな茶トラの猫がいました。僕はそのなんともない光景を一生忘れることができないでしょう。その茶トラの小さな猫がゆきちゃんでした。茶トラの小さな猫は川沿いのベンチの下で、寂しそうにただうずくまっていました。
ゆっくりと、お姉さんと一緒にその猫に近づくと、茶トラの子猫は少し顔をあげてこちらを認めると、驚いたことに、すぐにすくっと立ち上がり元気いっぱいに鳴きながら駆け寄って来ました。お姉さんがおいで〜って声かけると、人馴れしているみたいで、(お姉さんの)膝の上に飛び乗りました。抱っこされるのも好きな様子でした。
まだその時点では「猫のお母さん」が勧めてくれた、最近この辺に現れたまだ小さな猫がこの子のことかはわからなかったけど、きっとそうだろうという確信を持ちました。
少しすると猫のお姉さんは、あまり自分に懐いたら申し訳ないと思ったのか、「どうぞ」と言って飼い主になるかもしれない僕にその子猫を渡してくれました。お姉さんの時と同様、自分にもゴロゴロ言いながら甘えて来ました。つけてはいないけど、はっきりとした首輪の跡がありました。
そこで「猫のお母さん」もやって来て、「あ、その子の事よー」とおっしゃいます。「どうする?引き取ってもらえる?」と聞かれましたが、もう話をいただいた時点でうちに来てもらおうと決めてたので「はい」と答えました。
「猫のお母さん」とその子猫を迎えるにあたってトイレやらご飯やらどこの病院に連れて行くかなどを相談して、その準備が整うまでの数日間は一旦「猫のお母さん」が預かってくれることになりました。そういえば「猫のお母さん」は雰囲気的に猫村さんに出てくる村田の奥さんに似ています笑
で、子猫を「猫のお母さん」にお願いして自分はそのままジョギングに行きました。普段より速いペースで息切れなんかも気にせずに走り、首輪の跡もあり、あれほど人懐こい子猫が川沿いの堤防でただ1匹暮らすことの不安がどれほど大きかっただろうか、ベンチの下でうずくまっていたあの子猫はやっぱり寂しかっただろうなとか、そんなことを考えながら一生懸命走りました。