たまちゃんとのお別れ

ある日のランニング中、いつものようにたまちゃん達の溜まり場に行ってみたら姿が見えませんでした。日常風景として馴染んでいたたまちゃん達でしたから何だか不安に駆られたけど、まだ来てないのかな、ぐらいにしか思いませんでした。

*2009年ごろ、八王子の浅川沿いにたまちゃんと呼ばれる野良猫さんとその仲間の溜まり場があって、ご飯のお世話をしてくださる方々がいました。よくランニング途中によって癒されたものです。

 

たまちゃんたちの溜まり場だった所

 

そのすぐ後、猫のお母さん( 野良猫だったゆきちゃんを勧めてくれた方 ) からたまちゃんが死んじゃった、という話を聞きました。風邪だったと思うって猫のお母さん言ってて、悲しかったけど実感が全然わかず、でもたまちゃんにもう会えなくなった。たまちゃんまだ5歳ぐらいだって聞いてたけど・・・。 

 

その帰り道、再度たまちゃん達の溜まり場に顔を出してみました。そしたら当たり前だけど、やっぱり居ない。なぜか他の2匹も見当たらない。家に帰ると、さっきの実感の無さはどこへやら、ひたすら悲しくて、悲しくて・・・。

 

たまちゃん(奥)とやんちゃ顔のたまちゃんの仲間。ガラケーの低解像度でも写真があって本当に良かった涙

       

 

後悔したのはたまちゃんのフェルトのようになった毛玉の事でした。いつも痛くないのか心配だったけど僕は何もしてあげなかった。猫の天国があるのなら、そこには人もいるのだろうか。たまちゃんフェルトは綺麗にしてもらえているだろうか。  

 

たまちゃんは今うちにいるゆきちゃんのお友達だったのです。猫のお母さんがゆきちゃんを最初に保護しようとした時、たまちゃんに連れられて仲良く一緒に逃げたって聞きました。そのあと無事にゆきちゃんを保護してもらいましたが、当時ゆきちゃんはいつも一人でお留守番だったので、広めの部屋に引っ越したら、その時はたまちゃんにも来て欲しいなあと思っていたのです。たまちゃんの気持ちもあるから実際そうできたかは分からないけど・・・。

 

もし猫の天国に人間もいて、僕がそこへ行けたとしたら、たまちゃんがまだフェルトみたいな毛玉だったら、その時は僕が洗ってあげようね。

                     

             

その時までさよならたまちゃん

 

ゆきちゃんの避妊手術無事終了、でも悲しいことも

ゆきちゃんの避妊手術は2009年の9月だから、もう8年も経つけど、あの日のことは今後も忘れることはないだろうなあ。

 

確か前日の夜に動物病院に連れて行って、翌日の16時にゆきちゃんを迎えに行きました。病院に着くと、先生から避妊手術は無事終わったよとのことで一安心でした。ただ大変ショッキングな事がありました。

 

ゆきちゃんを受け取ったときに先生がおっしゃった言葉ですが、「この子、妊娠してたよ。」との事。「4匹かな、あと2週間ぐらいで産まれるぐらいだったよ。」

 

気が動転してしまいました。その子達はどうなったのかなど、状況をうまく把握できずにただ先生の話を聞いていました。「見る。いや、見ない方がいいよね。」と続ける先生。僕は何も言えませんでした。

 

抜糸が必要ない避妊手術も有るそうなのですが、妊娠していた為、少し大きく切ったから抜糸しないといけないとの事。一週間か10日後ぐらいにまた連れてきてね、との事で病院を後にしました。帰り道、ゆきちゃんは鳴いていたのでなだめつつも呆然とした状態で帰りました。

 

家についてゆきちゃんを出して、離してあげると暗いところに行ってうずくまってしまいました。自分とも全く目を合わせようとせず、小さな声でちょっと鳴く程度でした。回復するまでじっとしている猫の習性だろうから、しばらくこのままだろうと思い、ゆきちゃんを置いて病院に戻ることにしました。

 

病院に着くと、こちらをみとめた先生は、自分がすぐ戻ってきたし手ぶらだったからでしょうか、先生は電話中でしたが大変驚いた顔をなさいました。違います、何でもないですと身振り手振りで伝えると、先生も、じゃちょっと待ってて、とジェスチャー。

 

電話が終わり、どうしたの?と先生。ちょっとは冷静になっていたので、今晩の食事の事や、まだ手術したお腹は見ていないけど舐めたりしたらどうしたら良いかなど伺いました。そしてそのもうすぐ産まれそうだった4匹を見せて下さいとお願いしました。「うん、ちょっと待ってね」と連れてきて下さいました。

 

連れて来て下さったのは銀色の容器に置かれた腸のような物体でした。「中身は開けないけど説明するね。」と先生。ここで区切られていて2匹、ここでも区切られていて2匹で4匹だね、との事。

 

先生に伺いました。どうするのが最善の方法だったのでしょうか。例えば、お腹を開けて妊娠が分かった時点でまた閉じた方が良かったのか、またその前に気づくべきだったのでしょうか、と。うまく自分の言いたかった事が説明できず、先生に大変失礼な事を申し上げたかもしれません。自分は他にするべきことはなかったでしょうか、と言う事を確認したかったのです。

 

先生は説明して下さいました。全身麻酔をかけた時点でもう子供は助からない。毎回、前もってレントゲンを取る訳ではないから、実際お腹を開けたら妊娠してたという事はよくあるし、何も気にしなくて良いからとの事でした。失礼な物言いをした僕の気持ちを汲み取って説明して下さいました。

 

そして我々も慣れているし君も気にしなくて良い、大丈夫だからとの事。4匹の、ゆきちゃんが見ることができなかった、ゆきちゃんの子供達に手を合わせて帰ってきました。

 

野良猫の、最初にゆきちゃんを見た時、ベンチの下でただ一人うずくまっている姿を見て可哀相だな、と思いました。その姿は今でも忘れられずたまに思い出します。そんなゆきちゃんを連れてきて僕はゆきちゃんの野良猫として生活する人生から、飼い猫として歩むゆきちゃんを救ってあげた様な気持ちがあり、もう大丈夫、心配ないからね、という言葉をかけたりしていました。それが幸せな事だったのかどうかも分からないけど。そして、4匹もの小さな命に気づきもせず救う事ができなかった。

 

ゆきちゃんは当日、すこーしだけご飯を食べておしっこもしたので大丈夫そうかなと考えましたが、非常に複雑な気持ちでその夜と過ごしました。ただ、これからも元気なゆきちゃんと暮らしていきたいなと、前向きにいかないとなと、考えるのが精一杯な夜でした。

 

術後のゆきちゃん。こんな感じの絆創膏を貼ってもらっていました。