ゆきちゃんの避妊手術無事終了、でも悲しいことも

ゆきちゃんの避妊手術は2009年の9月だから、もう8年も経つけど、あの日のことは今後も忘れることはないだろうなあ。

 

確か前日の夜に動物病院に連れて行って、翌日の16時にゆきちゃんを迎えに行きました。病院に着くと、先生から避妊手術は無事終わったよとのことで一安心でした。ただ大変ショッキングな事がありました。

 

ゆきちゃんを受け取ったときに先生がおっしゃった言葉ですが、「この子、妊娠してたよ。」との事。「4匹かな、あと2週間ぐらいで産まれるぐらいだったよ。」

 

気が動転してしまいました。その子達はどうなったのかなど、状況をうまく把握できずにただ先生の話を聞いていました。「見る。いや、見ない方がいいよね。」と続ける先生。僕は何も言えませんでした。

 

抜糸が必要ない避妊手術も有るそうなのですが、妊娠していた為、少し大きく切ったから抜糸しないといけないとの事。一週間か10日後ぐらいにまた連れてきてね、との事で病院を後にしました。帰り道、ゆきちゃんは鳴いていたのでなだめつつも呆然とした状態で帰りました。

 

家についてゆきちゃんを出して、離してあげると暗いところに行ってうずくまってしまいました。自分とも全く目を合わせようとせず、小さな声でちょっと鳴く程度でした。回復するまでじっとしている猫の習性だろうから、しばらくこのままだろうと思い、ゆきちゃんを置いて病院に戻ることにしました。

 

病院に着くと、こちらをみとめた先生は、自分がすぐ戻ってきたし手ぶらだったからでしょうか、先生は電話中でしたが大変驚いた顔をなさいました。違います、何でもないですと身振り手振りで伝えると、先生も、じゃちょっと待ってて、とジェスチャー。

 

電話が終わり、どうしたの?と先生。ちょっとは冷静になっていたので、今晩の食事の事や、まだ手術したお腹は見ていないけど舐めたりしたらどうしたら良いかなど伺いました。そしてそのもうすぐ産まれそうだった4匹を見せて下さいとお願いしました。「うん、ちょっと待ってね」と連れてきて下さいました。

 

連れて来て下さったのは銀色の容器に置かれた腸のような物体でした。「中身は開けないけど説明するね。」と先生。ここで区切られていて2匹、ここでも区切られていて2匹で4匹だね、との事。

 

先生に伺いました。どうするのが最善の方法だったのでしょうか。例えば、お腹を開けて妊娠が分かった時点でまた閉じた方が良かったのか、またその前に気づくべきだったのでしょうか、と。うまく自分の言いたかった事が説明できず、先生に大変失礼な事を申し上げたかもしれません。自分は他にするべきことはなかったでしょうか、と言う事を確認したかったのです。

 

先生は説明して下さいました。全身麻酔をかけた時点でもう子供は助からない。毎回、前もってレントゲンを取る訳ではないから、実際お腹を開けたら妊娠してたという事はよくあるし、何も気にしなくて良いからとの事でした。失礼な物言いをした僕の気持ちを汲み取って説明して下さいました。

 

そして我々も慣れているし君も気にしなくて良い、大丈夫だからとの事。4匹の、ゆきちゃんが見ることができなかった、ゆきちゃんの子供達に手を合わせて帰ってきました。

 

野良猫の、最初にゆきちゃんを見た時、ベンチの下でただ一人うずくまっている姿を見て可哀相だな、と思いました。その姿は今でも忘れられずたまに思い出します。そんなゆきちゃんを連れてきて僕はゆきちゃんの野良猫として生活する人生から、飼い猫として歩むゆきちゃんを救ってあげた様な気持ちがあり、もう大丈夫、心配ないからね、という言葉をかけたりしていました。それが幸せな事だったのかどうかも分からないけど。そして、4匹もの小さな命に気づきもせず救う事ができなかった。

 

ゆきちゃんは当日、すこーしだけご飯を食べておしっこもしたので大丈夫そうかなと考えましたが、非常に複雑な気持ちでその夜と過ごしました。ただ、これからも元気なゆきちゃんと暮らしていきたいなと、前向きにいかないとなと、考えるのが精一杯な夜でした。

 

術後のゆきちゃん。こんな感じの絆創膏を貼ってもらっていました。

 

ゆきちゃん動物病院へ

ゆきちゃんとの出会いの続きになります。

 

ゆきちゃんの受け入れ準備が整い、その間ゆきちゃんを預かってくれていた「猫のお母さん」のうちまで迎えに行きました。なんと「猫のお母さん」のおうちには10数頭の猫がいました。ゆきちゃんは流石にまだ数日なのであんまり馴染めていないようでした。

 

「猫のお母さん」と今後の相談をして、まずは引き取ったその足で病院に連れて行くことにしました。「ここからバスに乗って、どこどこで降りたらすぐ近くに動物病院あるからねっ」て教えてもらい、ゆきちゃんに用意して来たキャリーバッグに入ってもらってお礼を言い、僕とゆきちゃんはバスに乗りました。

 

ころころと環境が変わるせいもあったでしょう、ゆきちゃんやはり不安なようで、バスの中でずっと泣き通しです。他の乗客の方々に迷惑をかけていないかと自分もずっと心配し通しでしたが、15分ぐらいで目的地に近づきました。とにかく早く降りたかったのでバス停の少し前で席を立ち、目的地直前の信号で止まったため、運転手さんにもうお金を入れて良いか聞きました。すると駄目だと。信号待ちで止まっていたとはいえ、運転中に話しかけたのもいけなかったのだと思います。しかし、そのあと思わぬ一言を言われてしまいました。

 

運転手さん「俺、猫嫌いなんだよ。そんな猫が見えるケースに入れて乗せるなよ!」とのことでした。布製のキャリーで四方がメッシュだったと思います。しかし、ちゃんとした猫用のキャリーでした。

 

焦っていたし、ゆきちゃん運ぶのに要領を得なかったので、運転手さんにお詫びしてバスを降りました。今ならもしかしたら言い返していたかもしれませんが、その時の自分はインフルエンザにかかって会社を早退した時ぐらいに弱っていたので、何も考えられずとにかく謝りました。しかし言い返せなくて良かったと思うようにしています。猫さんに対しての見方が一様ではなく、多様であると認識することも大事かなと思うからです。かなりショックな出来事ではありましたけど。

 

そうして「猫のお母さん」からゆきちゃんを譲り受けて数十分でしたが、気持ちとしてはようやく、なんとか動物病院にたどり着くことができました。おそらくはゆきちゃんと同様、自分としても生まれて初めての動物病院です。緊張していましたが、小さな動物病院の待合室で聞こえてきた、先生と診察を受けている飼い主さんの話を聞いて少し安心しました。

 

詳しい事情はわかりませんが、以前飼い主さんが面倒を見ていたと思われるペットの話のようで、先生が「あそこまで面倒見てもらえたらね、きっと幸せだったと思うよ。」と声をかけていました。飼い主さん泣いてましたが、僕も思わずもらい泣きしそうでした。わかる人少ないかもしれなくて恐縮ですが、「稲中」の前野と井沢にゲイ疑惑が持ち上がり、二人して励ましあっている話を聞いてしまった田中のように、僕はきっと鼻を赤くしていました。

 

待合室には他にもお二人ほど、自分の前に順番を待っている方がいました。自然と今日はどうしたんですか?という感じで声をかけあう空間でした。お互いの状況を説明しているうちにゆきちゃんの診察の順番になりました。

 

まずは挨拶をして、病院行ったら「猫のお母さん」が自分から紹介されたって言いなさいよってことだったので、その旨を先生に伝えました。そうしてまずは「猫のお母さん」の話になり、動物病院に来た経緯などを先生に話しました。

 

ゆきちゃんは生まれつきかどうか、上下の犬歯以外の歯がほとんどありませんでした。また、毛が生えていないハゲちゃってる場所も2箇所ありました。それらはおそらく今後もそのままだろうということでした。しかしそれ以外は問題なさそうとのことで、ちょっとした健康状態の診察とあとはフロントラインなんかをつけてもらい、多分注射も一本打ってもらったような記憶があります。

 

そして会計ですが、信じられないことに1000円しか請求されませんでした。それは自分がとてもみすぼらしかったとかそういう理由でもおそらくなくって、野良猫の保護とかにとても理解のある先生だったのだと思います。診察中も「最近はもう野良犬とかはいなくなったけど、猫はまだたくさんいるんだよね。」とおっしゃってました。その後、引っ越すまでその動物病院にお世話になりましたが、料金はずっと良心的というかおそらく相場よりずっと低い設定でした。

 

長い1日でしたが、ゆきちゃんを無事動物病院に連れて行くことができて、ようやく家に帰ることができました。その夜、ゆきちゃんは大変よく泣きました。飼い主は長い1日はまだ終わっていなかったんだと悟り、軽く泣きたくなりました。しかしそんなことは想定内で、次の日はちゃんと休みを取っていたので、まずはほっと一息ついたのでした。

 

たぶん来て間もない頃のゆきちゃん(痩せてる!